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2013年 12月 17日

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

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ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー 森達也著

ラストエンペラーと聞くときっと大多数の人が清国最後の皇帝、溥儀を想像することと思います。
私に至っては映画の方が先に浮かんできて、ジョン・ローンは今頃どうしているのだろう?なんて思うばかりなのですが、、、

ベトナムへは10年以上前、日本が雑貨ブームで湧く時期に一度行ったことがあります。
ホーチミンの街中にはまだベトナム戦争の古傷が残るかのように、手や足がない物乞いの老人がたくさんいて、ホテルを出るとすぐに物売りの子供達にわっと囲まれ、常にクラクションの音が響いて、ごみごみとした雑多な雰囲気、、、そんな感じの場所でした。
そのベトナム、グェン朝最後の王子、クォン・デは日本の粗末な貸家で孤独に亡くなった、と言う衝撃的な始まりでこのドキュメンタリーの幕が開きます。



そもそもなぜ、日本から遠く離れたベトナムの王子が日本へ?
私の疑問はそこから始まりました。

中国、韓国など隣国のアジアの国に比べると、東南アジアにあたるベトナムは距離にすると意外と遠いのです。
私自身、飛行機で2~3時間の距離だろう、と思い込んでいたせいもあり、旅行の時に7時間近くかかったのを思ったよりも遠いな、と感じました。
約7時間、と言えばハワイへ行ける飛行時間なんですよ。
そう思えば同じアジアなのにちょっと遠いな、と思いません?(私だけかもしれませんけど^^;)

そんな訳で遠い東南アジアの国の王子が何のために、、、と読み始めたのですが、これが日本の近代史をきちんと勉強していない私の頭にはちょっと難しかったのです。

日本の学校教育の中での近代史、って本当に軽んじられているなと思うのですが、今の世の中、そしてこれからの日本の未来を考えるのならば、近代史こそ重点を置いてもっときちんと若い人たちに勉強してもらうべきだと思います、、、と言うのは近代史に疎い私自身への言葉でもあるのですが。

王子が日本へやってきたのは、長いフランスの植民地支配に終止符を打ち、国民の悲願であるベトナムの独立を実現させるのが目的でした。
彼が師と仰ぐ革命家、ファン・ボイ・チャウが熱狂的な日本びいきだったことから、当時日清戦争、日露戦争を勝利しアジア圏では破竹の勢いだった日本を後ろ盾にベトナムの独立を目指そうと、フランスの国家秘密警察の目を盗み危険を冒して遥々日本へ渡ってきたのでした。
そして日本では犬養毅や玄洋社の頭山満などのバックアップがあり、様々な顔ぶれと出会う事になります。
その中には大隈重信、大川周明と言った教科書で目にしたことがある名前も多くあり、近代史をもう少し詳しく勉強していれば、もっと時代背景などよく分かって理解できたのに、と私は悔しく思ったのです。

面白かったのが、新宿にある中村屋、がこの時期にとても重要な役割を担っていたということ。
詳しくは省きますが、独立運動をしていたインド人革命家のラス・ビハリ・ボースが英国総督を爆殺未遂したことから英国に追われることになり日本に亡命、当時外国人や芸術家のサロン的役割をしていた中村屋で匿うようになります。その後中村屋の長女、俊子と結婚したボースは日英同盟が解消される年まで30数回も転居を繰り返したそうです。その後日本に帰化したボースは中村屋でインドカリーを誕生させるきっかけを作ったのだそうです。

先日丁度インド人エリートサラリーマンの手記を読んだばかりだっただけに、この話はとても意外でした。
インド独立についてはガンジーくらいしかよく知らなかったのですが、この時期に独立の志士が日本に亡命していたなんてまったく知りませんでした。
「喪失の国日本」の中で著者のシャルマ氏が自分の父親が日本人とインパール作戦を戦ったことを誇りに思い、日本には特別の思いを抱いていた、と書いていたのですが、それより以前にインドと日本にこんな繋がりがあったとは、、、もしシャルマ氏がこの話を知っていたら、どう思ったのでしょうか?それが知りたかったです。

日本はボースだけでなく、蒋介石や孫文など中国からも亡命者を受け入れており、この時期はより混沌とした情勢だったようです。
何かが生み出される前の熱気を持つ漠然とした混乱状態、そんな雰囲気を文中から感じ取りました。

そのような時代の中に流されるようにして日本に辿り着いた王子、クォン・デ。
彼のあまりにも純粋で、、、受け取り方によっては受動的過ぎる生き方は、ある意味時代には沿わなかったのかもしれません。
遠い異国で、ついに妃と二人の子供たちと再会することなく一生を終え、その眼でベトナムの独立を見ることがなかった王子、、、悲劇とひとくくりにしたらそれまでです。
が、彼の存在を知らない日本人がほとんどと言う(自分も含めて)現実に私は悲しい気持ちがします。

せめて彼の存在を一人でも多くの日本人が知ってくれたら、、、過ぎてしまった歴史は戻ることもないし、知ったからと言って何も変わるわけではないのですが、彼の人生を知ることで今の私たちがこれからの未来に活かせる事が何かあるのではないかな、と思います。

漠然とした印象しか文章で残せないのがもどかしいのですが、興味がある方はぜひこの本を手に取って欲しいと思います。
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by jamieoliverlove2 | 2013-12-17 00:00 | Book Club


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