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2015年 06月 09日

ケルトを巡る旅

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ケルトを巡る旅 河合隼雄著

この春、アイルランドに出かけた際にお供にした1冊がこちらの本でした。

アイルランドと英国の一部に今も色濃く残るケルト文化を、心理学者の河合先生が実際に現地を巡り体験したことを綴ったのがこちらの本。
心理学者なだけあって、様々なケルト的事象も非常に合理的、また学術的に冷静に判断して解説してくれるので、とても分かりやすく読めました。



ケルト人が文字を持たなかったことから、自分たちの文化や歴史を書き残すことなく、表舞台から去っていったためはっきりとした歴史的事実は今も不明なことが多いのですが、逆に文字で残さなかったからこそ、人々の心の中に残り、受け継がれたものは多かったのではないかな、と思います。

一つ、とても面白いな、と思ったのは、私はいつもアイルランドに行くたびに英国よりずっと人々がオープンで自分が受け入れられている、と感じることが多いので、アイルランドの方が好きだなぁ、、、と思っていたのですが、同じような感覚を河合先生も感じておられた、と言うこと。
河合先生は「非言語的交流」と呼んでおられたのですが、日本人はアメリカやヨーロッパの人々に比べるとこの非言語的交流が多いのだそうです。
興味を持った方はぜひこの本を読んでいただきたいな、と思うのですが、端的に言えば日本人と言うのは自分があることで事実を知っていたとしても、相手のことを思いやったり、相手の意識に近くなることで事実を折り曲げて本来知っていた事実とは違う内容の話をしたりすることがあります。
これが欧米人にしてみたら、事実を知っていたのに反対の事を言うなんて、日本人は嘘つきだ、と言うことになるのだそう。日本人同士にしてみれば、普段からそのようなコミュニケーションを取っているため、特に相手を糾弾するような大げさな話ではない訳です。

そしてこのようなコミュニケーション方法と言うのはアイルランド人社会にも見られる独特なものなのだそう。
なので、常々他のヨーロッパ人から「アイルランド人は嘘つきだ」と歴史的にも言われる原因になったのだ、と河合先生は書かれておられました。

これら非言語的交流は日本では「相手の表情や態度から察する」と言う日本文化の大きな構成要素になっています。
「以心伝心」と良く言いますが、これはそんな日本文化を表すいい例ではないでしょうか。

よく日本では日本と英国は島国なのでよく似ている、と言われることがありますが、実際に住んでみるとそんなことはまったくない、と分かります。
それよりも私にとっては日本とアイルランドの方が似ている部分が多いのではないかな、と感じることが多かったのですが、河合先生が私と同じような考えをしておられたので、私の感じたことは決して間違ってなかったのだな、と改めて納得しました。

本の中に日本とアイルランドが似ているのは大陸の周縁部と言う地理的な共通点もある、と書かれています。
アイルランドはローマから非常に遠く、キリスト教の影響を受けにくかった。そして中華文明に対する日本のように、ある程度距離のある方が文明を洗練させることができるのかも知れない、とありました。
これはとても面白い共通点で、キリスト教が布教しながらも、ケルト文化と共存するような形で発達していったアイルランドと、仏教が伝来したのちも神道やそれまで根強く残っていたアミニズム信仰と共存する形で変化していった日本とよく似ているのではないでしょうか。

私がアイルランドやケルト文化に惹かれるのも、日本人であるということが大きく影響しているのかもしれません。
人間が同じような資質を持ったものや人に惹きつけられるのは本能的なものでしょう。

文字で残されなかったために、これだけ文明が発達した世の中においても、まだまだケルト文化については知られていない、分からないことが多くあります。
これから先、もしも、もっとケルトについて分かることが増えて来たら、日本古来からの文明や文化との共通点が見つかるのではないだろうか、と密かに私は楽しみにしています。
謎が謎のまま残って、人々の想像力をかきたてる、と言うのも面白いと思いますけれど。

アイルランドやケルト文化に興味がある方にはぜひお勧めの一冊です。
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by jamieoliverlove2 | 2015-06-09 00:00 | Book Club


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