2015年 12月 08日

The Murder Detectives

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Channel4で3夜連続で放送されていた『The Murder Detictive』を見ました。

前評判がとても良かったので見たのですが、見た後、本当に色々考えさせられる秀逸なドキュメンタリーだった、としみじみ思いました。

このドキュメンタリーは2014年3月5日の夜、ブリストルのフラットでナイフで刺殺された19才、ニコラス・ロビンソンの事件を捜査する殺人捜査課を18か月に渡って密着取材した番組です。



番組の冒頭、ニコラスが999コールした実際の声が流れます。
「ナイフで刺されたんだ、すごくひどい状態になってる、、、」
999のコールセンターの女性が「どこにいるの?場所はどこ?」と必死に尋ねるものの、ニコラスはこの時すでに出血多量で昏睡状態に陥り、路地で冷たくなっていました。

TV画面には一面血の海になった路地裏の風景が映し出されていました。

衝撃的なシーンで始まるドキュメンタリーは一切余分なナレーションがなく、ただ、淡々と捜査陣の様子、悲嘆にくれる家族の様子、街角の様子が映し出されていきます。

サマセット警察の殺人捜査課を指揮するのは、DCIアンディ・ビヴァン。
彼は繰り返しチームミーティングで「ニコラスはこんな死に方をすべきじゃなかった(Nicholas didn't deserve to die like this)」と繰り返します。
そして殺人犯に法的裁きを受けさせるために、なんとしてでも逮捕しなくてはならない、とチームを叱咤します。

ニコラスの両親は少し前にニコラスの兄をジャマイカで亡くしていました。
ケンカの末の銃殺。
二人の息子を短期間の間に次々と亡くし、今や誰も子供がいなくなって、言葉もないほど悲嘆に暮れている両親の様子を見て、私は何も言えませんでした。

捜査をしていくに従い、何故ニコラスが殺されなくてはならなかったのか、その理由も明らかになっていきます。

実は両親や周囲の人間が思うほど、無垢の聖人ではなかったニコラス。
彼は裏で銃の違法取引に手を染めていたのです。

アンディはその銃の取引でトラブルになったことが直接の原因になったのだろう、と理由付けます。

事件当日のCCTVの映像を解析していくに従い、犯人像が明らかになっていきます。
そして映像からある一人の青年が犯人と目され、逮捕されました。
当初黙秘を続けていた犯人でしたが、様々な証拠やCCTVの映像から、結局裁判では有罪となり23年の禁固刑を言い渡されました。

某新聞で評論家が「10年に一度のドキュメンタリー」と書いていましたが、まさにそういわれるに相応しい番組だったと思います。

ちらり、と見た夫が「これはドラマ化してある番組か?」と思わず聞いてしまうくらい、現実味がない、と言うか、本当に映画のようなドキュメンタリーでした。

英国と言うと、王室やアフタヌーンティ、のどかな田園風景やマナーハウス、、、と言ったキーワードが浮かぶ人がほとんどだと思いますが、この番組で映し出されていたのは現実世界の今の英国でした。
報道されない数を含めれば、年間何百人と言う若者がナイフ犯罪の被害に遭っています。
その数は日本に居たら、到底信じられないくらいでしょう。
ですが、これが英国の実際の姿なのです。

番組最後に"Sarge"(巡査、と言うニックネームの警官)が独白します。
「人は皆、選ぶことが出来る。XXX(犯人の青年)も選ぶことが出来る瞬間があった。彼の周りには善良な人たちがたくさんいて、彼らから良い影響を受けることも出来た。でも彼はその選択をしなかった。悪を選んだんだ。僕はそれがとても悲しい」

この番組には酔いどれ刑事も結婚生活に悩む警官も銃をがんがんぶっ放すスーパーヒーロー的な刑事もいません。
ただ、犯人を追いかけ、淡々と自分に振り分けられた捜査を続ける警察官たちの姿が描かれています。
その様子はまるで大企業で働く一介の会社員そのもの。
映し出されているのが警察署で、そこで働く人たちが警察官だ、と言われなければ、そう信じてしまってもおかしくないようでした。

番組が終わった後に残るのは、犯人が逮捕された爽快感ではなく、底に澱のようにいつまでも残る息子を失った家族の重苦しい悲しみでした。

今ならまだChannel4のオンデマンドで視聴可能ですので、見られる方はぜひ見てみてください。
色々と考えさせられる番組でした。
Channel4オンデマンドはこちらからどうぞ。
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by jamieoliverlove2 | 2015-12-08 00:00 | その他


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